認知症になる前にするべき相続対策3選
「もしも自分が認知症になったら、財産はどうなるのだろう…」「家族に迷惑をかけたくないけれど、何から始めればいいかわからない」。
長寿が当たり前になった今、認知症は誰にとっても他人事ではありません。
そして、認知症になってからでは、ご自身の意思で財産を管理したり、大切な人に想いを託したりすることが難しくなってしまうのが現実です。
「まだ元気だから大丈夫」と先延ばしにしているうちに、いざという時、ご家族が困惑したり、思わぬ相続トラブルに発展してしまったりするケースは少なくありません。
この記事では、そんな未来の後悔を避けるために、判断能力がしっかりしている「今」だからこそできる、具体的な相続対策を3つに厳選してご紹介します。あなたとあなたの大切な家族の未来を守るために、一緒に考えてみませんか。
認知症になる前にするべき相続対策
認知症を発症すると、ご自身の財産の管理や処分が難しくなり、相続に関する意思決定も困難になる可能性があります。そうなる前に、将来の安心と円満な相続のために、元気なうちから準備を始めることが非常に重要です。
具体的には、以下のような対策を検討してみましょう。
- 生命保険への加入
- 遺言書の作成
- 生前贈与の実行
これらの対策について、それぞれ詳しく見ていきましょう。
生命保険に加入する
生命保険は、相続対策において有効な手段の一つです。
保険金は受取人固有の財産とみなされるため、遺産分割協議の対象外となり、指定した人に確実に現金を遺すことができます。
そのため、たとえ遺産分割協議で揉めるようなことがあっても保険金を請求することはできるため、相続税、固定資産税などの税金の納税、医療費などの支払いに充てることが可能です。
また、死亡保険金には「500万円 × 法定相続人の数」という非課税枠があり、相続税の負担軽減にも繋がります。
ただし、保険契約も法律行為であるため、認知症と診断され意思能力がないと判断されると、新規加入や契約内容の見直しが困難になるケースがほとんどです。
ご自身の意思を反映させた保険契約を結ぶためには、判断能力がしっかりしているうちに検討し、手続きを済ませておくことが肝心です。将来の納税資金や遺族の生活費確保のためにも、早期の準備をおすすめします。
遺言書を作成する
ご自身の財産を誰に、どのように遺したいかという最終意思を法的に有効な形で示すものが遺言書です。
遺言書を作成しておくことで、法定相続分とは異なる財産の配分を指定したり、相続人以外の人(お世話になった方など)へ財産を遺贈したりすることが可能になります。これにより、相続人間での無用なトラブルを未然に防ぐ効果も期待できるでしょう。
遺言には主に自筆証書遺言と公正証書遺言がありますが、いずれも作成時には遺言能力(自分の意思で遺言内容を決定できる能力)が必要です。
認知症が進行し、この遺言能力がないと判断されれば、遺言書を作成することはできません。ご自身の思いを実現し、円満な相続を迎えるためにも、元気なうちに専門家へ相談するなどして準備を進めましょう。
生前贈与を行う
生前贈与は、ご存命のうちに財産を他の方へ無償で分け与える行為で、将来の相続財産を減らすことで相続税の負担を軽減する効果が期待できる対策です。
年間110万円までの基礎控除額内であれば贈与税がかからない暦年贈与や、特定の条件下で利用できる相続時精算課税制度など、いくつかの方法があります。計画的に活用することで、スムーズな資産移転が可能になります。
しかし、贈与も契約行為の一種であるため、贈与を行うご本人に十分な意思能力がなければ、その贈与は法的に無効と判断されるリスクがあります。
認知症の症状が進行する前に、誰に何をいつ贈与するのかを明確にし、贈与契約書を作成して、適切な手続きを踏んで進めることが重要です。
専門家のアドバイスも参考にしながら、計画的に実行しましょう。
まとめ
今回は、認知症になる前にぜひ検討していただきたい相続対策として、「生命保険の活用」「遺言書の作成」「生前贈与の実行」という3つの具体的な方法とそのポイントを解説しました。
どの対策も、ご自身の財産を守り、大切なご家族へスムーズに想いを繋ぐために非常に有効な手段です。
最も重要なことは、これらの対策がご自身の明確な意思能力があるうちにしか行えないという点です。「まだ先のこと」と考えず、心身ともに元気な今だからこそ、冷静に、そして計画的に準備を始めることが、将来の安心と円満な相続への何よりの近道となります。
この記事が、あなたとご家族にとってより良い未来を築くための一歩となれば幸いです。まずは専門家へ相談したり、ご家族と将来について話し合うことから始めてみてはいかがでしょうか。