生前贈与が税務署に指摘される3つのケース

相続税対策として多くの方が注目する生前贈与ですが、実際には税務署から「贈与と認められない」と指摘される事例が少なくありません。
せっかくの対策が無駄になり、過去にさかのぼって高額な追徴課税を求められる可能性もあるでしょう。なぜこのような事態が起こるのか、そして何が問題なのかを理解しておくことが大切です。
本記事では「生前贈与が税務署に指摘される3つのケース」を中心に、具体的なリスクや対策を掘り下げます。
名義預金の落とし穴、贈与税の申告を怠ったときの危険性、継続的な金額移動のチェックポイントなどを詳しく解説し、うっかりミスや曖昧な手続きがどのようなトラブルを生むかを明らかにします。
名義預金と判断される場合
生前贈与のつもりでお金を子ども名義の口座へ移していても、親が通帳や印鑑を管理し、出し入れを自由に行っていると「名義預金」とみなされることがあります。
項目 | 内容 |
名義預金の典型的な状況 | ・子ども名義の口座に親が資金を移す・通帳や印鑑は親が管理し、自由に出し入れしている |
名義預金とされる理由 | ・実質的に親が口座をコントロールしており、「所有権の移転」が行われていないとみなされる |
名義預金とは、事実上預けた人が資金をコントロールしている状態を指す言葉です。
このような場合には、税務署から「贈与は行われておらず、元の持ち主と変わらない」と判断されるリスクが高いでしょう。
もし名義預金と指摘されると、相続発生時に預金は被相続人(親)の財産として課税対象になるため、生前贈与の節税効果を得られないおそれがあります。
真の贈与と認められるためには、受贈者が口座を管理し、利息や元金の使途を自分の判断で行えるようにしておくことが重要です。
資金の流れが第三者から見て明確であるよう、契約書の作成や定期的な記録の保管を行うと安心できます。事前に備えておくことが大切でしょう。
調査で発覚した場合は、過去の贈与税や加算税が課される可能性が大いにあります。
贈与税の申告をしていない場合
贈与税の申告を行っていないと、贈与の事実そのものを証明しづらくなる場合があります。本来、年間110万円を超える贈与には贈与税の申告が必要です。
しかし、贈与契約書を作成していなかったり、申告の手続きを怠っていたりすると、税務署から「贈与が成立していないのでは」と見なされる恐れがあるでしょう。
さらに、無申告のまま多額の財産を渡していたことが発覚すると、過去にさかのぼって厳しく調査される可能性があります。最悪の場合、追徴課税や加算税が課されるだけでなく、生前贈与を利用したはずの節税効果も台無しになりかねません。
そうしたリスクを回避するためにも、贈与を行う際は必ず契約書を用意し、贈与税の申告義務があるかどうかを確認することが重要です。
もし申告が必要な金額を贈与しているのであれば、期限内に申告することで余計なトラブルを避けられるでしょう。
毎年同時期に同額の贈与を行っている場合
毎年の贈与で年間110万円以内に抑えていれば、贈与税がかからないと考えて油断している方も少なくありません。
しかし、同時期に同額を繰り返し渡しているだけで、書面上の契約や申告を行っていない場合には、税務署から「実質的には一度に多額の贈与をしたのではないか」と疑われる可能性があるでしょう。
もし「初めから数年分まとめて贈与する意図があった」と見なされると、合計額に応じた贈与税が課されるだけでなく、過去にさかのぼって追徴課税が発生するリスクも否定できません。
そうなると、本来計画していた節税がかえって不利に働くことがあり、家族への資金移転がスムーズに進まないケースも出てきます。
こうしたトラブルを避けるには、毎年の贈与についてきちんと契約書を作成し、必要に応じて贈与税の申告を行うことが大切です。
また、振り込みのタイミングや金額を変えるなど、形式だけで毎回の贈与が独立していることを示す工夫が有効でしょう。
まとめ
生前贈与を活用する際には、名義預金と疑われる可能性や、贈与税の申告を怠った場合のリスク、そして毎年同じ時期に同額を贈与し続けることで一括贈与と見なされる恐れなど、多方面の注意が必要です。
どのケースも、税務署から指摘を受けると過去の状況まで調べられ、想定外の課税を招きかねません。契約書の作成や贈与税の申告など、形式面と実態の両方を整えておくことが大切でしょう。
さらに、毎年贈与する場合は金額や振込のタイミングを変えるなど、少しの工夫でリスクを回避できる可能性があります。
最終的には適切な手順を踏んでいれば、生前贈与は家族に財産をスムーズに渡し、相続時の負担を軽減する大きな手助けとなるでしょう。
問題点を正しく把握して、安心できる未来を築くきっかけにしてください。専門家に相談しながら進めれば、手続きの不備や見落としを防ぎやすくなるでしょう。