親の実家売却|相続後が良い3つの理由
親が高齢になり、「そろそろ実家を処分したい」という話が出たとき、頭をよぎるのが「いつ売るのがベストなのか」というタイミングの問題です。
生前のうちに売却して資金を有効活用する方法もありますが、相続後に実家を売却することで、税金面で思わぬメリットが得られるケースがあります。
本コラムでは、相続後に売却する際の代表的な優遇制度や、その恩恵を受けるための注意点についてわかりやすく解説します。
親の実家という特別な財産をどう扱うか、家族で話し合う際にぜひ参考にしてください。
親の実家売却|相続後が良い3つの理由
親の実家売却は、優遇制度をうまく活用すれば、相続後が良いこともあります。具体的な理由は以下の3点です。
- 小規模宅地の特例で相続税が減る
- 相続空き家の特別控除が使える
- 不動産の方が相続税が少ない
では、それぞれ見ていきましょう。
①小規模宅地の特例で相続税が減る
親の実家の土地を相続するとき、「小規模宅地の特例」を使うと、相続税の計算上、土地の評価額が大幅に減額される場合があります。
具体的には、被相続人(親)が亡くなる直前まで居住していた建物の建つ敷地が対象となり、最大80%の減額が認められます。
- 減額のしくみ
- 相続税の計算では、相続財産の課税価格が高いほど税率が上がっていきます。
- しかし、この特例を使えば、居住用不動産の評価を大きく抑えられるため、相続税の負担が軽減されるメリットがあるのです。
- 適用要件
- 「親が亡くなる直前まで居住していた」ことや、「相続人が相続後も一定期間、その土地を所有している」など。
- 小規模宅地の特例は、ケースにより要件が異なるため、相続手続きに入る前に必ず専門家に確認しましょう。
- 相続後に売却するメリット
- 特例を使って相続税を減らせる。
- 不動産を長期間にわたって管理する手間や固定資産税の負担も軽くできる。
②相続空き家の特別控除が使える
親が一人暮らしをしていた実家が相続によって「空き家」になった場合、「相続空き家の特別控除」という制度が利用できる場合があります。
これは、居住用住宅を相続したあとに要件を満たして売却すると、譲渡所得(売却益)から最大3,000万円が差し引かれる制度です。
- 主な適用要件(その他複数の適用要件があります)
- 被相続人が亡くなる直前まで一人で住んでいた住宅であること。
- 区分所有建物でないこと(マンション化や2世帯住宅化しない)。
- 一定の耐震基準を満たした状態で売却するか、必要に応じて耐震リフォームを行うこと
- 相続から3年を経過する日の属する年の12月31日までに売却する事に売却すること。
注意点として、空き家になった実家をそのまま放置すると、建物の老朽化が進み固定資産税もかさみます。
加えて、防犯や景観など地域にも影響が出るため、早めに売却して活用する方が得策となることも少なくありません。
③不動産の方が相続税が少ない
親が亡くなったタイミングで実家をすぐ売却するのではなく、不動産として保有しておくと相続税の課税評価額が相対的に低くなる場合があります。
一般的に、不動産は時価ではなく「固定資産税評価額」や「路線価」などを基準に評価されるため、市場価格よりも低い金額とされることが多いのです。
ただし、不動産を売却すると、その時点で譲渡税(所得税・住民税)が発生する可能性があります。
相続税の節税効果と、後々の売却時の税金とのバランスを考慮し、どのタイミングで売却するかを検討することが大切でしょう。
まとめ
親の実家を売るタイミングは、相続前と相続後でそれぞれメリット・デメリットが存在します。
相続後に売却する場合は、小規模宅地の特例を活用して相続税が減る可能性があり、さらに相続空き家の特別控除によって譲渡所得税の負担が大幅に軽くなることも考えられます。
また、不動産の相続税評価額が時価より低く設定されることも多いため、結果的に相続税が少なくて済むこともあるでしょう。
ただし、これらの優遇策にはいくつもの細かい適用要件があるうえ、個別の状況によって受けられる恩恵は大きく変わります。
また、実家の売却を考える際には、早めに税理士や不動産会社などの専門家と相談し、自分たちにとって最適なプランを検討することが望ましいでしょう。
親が残してくれた思い出の詰まった家をどうするかは、家族として大切な決断です。税制のメリットを上手に活用しつつ、将来にわたって後悔のない選択をしていきたいものです。